釣りたての魚を持ち帰ったら新鮮なうちに刺身で食べたいという方も多いと思いますが、実は刺身で食べる場合は釣ったその日に食べるよりも、数日間寝かせてから食べた方が美味しいのはご存知でしょうか?
そこで今回は、そんな釣った魚の熟成方法や、熟成に向いている魚について紹介します。
旨味が激増!釣った魚の熟成のやり方や、熟成に向いている魚を紹介
魚の熟成とは?
魚の熟成方法の前に、まずは魚を熟成とは何かについて紹介します。
魚の熟成とは簡単に説明すると「魚を寝かせることで切り身の中のたんぱく質をアミノ酸に分解させ、旨味を増幅させること」を指します。
魚の身にはタンパク質が含まれているのですが、釣りたての魚はこのたんぱく質があまり分解されていない状態なので、コリっとした歯ごたえはあるものの旨味としては少ないです。
このたんぱく質を適切で衛生的な環境で一定時間保管することで、魚自身のたんぱく質分解酵素の働きによってタンパク質がアミノ酸に変わることで旨味を増幅させることができます。
熟成させた魚は熟成前に比べて魚の旨味が強く感じられるだけでなく、もっちりとした食感となり、更に適度に水分が飛ぶことで旨味を凝縮させることができます。
熟成に向いている魚
次に熟成に向いている魚について。
魚には熟成に向いているものと、熟成に向いていないものがあります。
魚の種類を1種類ずつ覚えるのは大変なので、ざっくりと
- 傷むのが早い魚:サワラ、サバなど
- 血合いの多い魚:カツオなど
は熟成に不向きです。
時間をかけると熟成を通り越して腐敗してしまうので、寝かせてもせいぜい1-2日といったところかなと思います。
逆に白身魚は血合いも少なく熟成に適しているので
- タイ系:スズキ、マダイなど
- 根魚系:ハタ、ソイなど
- ヒラメ
- マス系:サクラマス、ニジマスなど
などの魚は熟成に向いている魚であると言えます。
ちなみに同じ魚の中でも、血合いの付近や脂の多い脇腹付近は悪くなるのが早いので、長期間寝かせる場合はこれらの部位は外してしまった方が良いです。
魚の熟成に必要なアイテム
魚の熟成に必要なアイテムについて紹介します。
お酢
魚のぬめり取り、および殺菌用に使用。洗い流すので銘柄や種類についてはなんでもよいです。
キッチンペーパー
魚の水気をふき取るために使用。水気が残ると雑菌が繁殖しやすいのでケチらない。ダイソーで売っている「洗えるキッチンタオル」がキッチンペーパーなのに絞って繰り返し使えるので便利です。
フレッシュマスター
下処理の終わった魚を包む時に使用。雑菌の繁殖を抑える他、魚から出たドリップを適度に吸い取ることで雑菌の繁殖を抑えてくれる。プロの料理人も太鼓判を押すアイテム。
各アイテムの詳しい紹介については下の記事からご覧いただけます。
熟成のやり方について
ここからは実際に魚の熟成の方法について紹介します。
ただし紹介の前に
※ここで紹介する方法はあくまで僕が過去に試してきて成功してきたものというだけであって、万が一のことがあっても責任はとれません。あくまで自己責任でお願いします。
とはいえ今まで一度も腐敗させたり、体調が悪くなったことはないので、問題はないかなと思いますが^^;
熟成を成功させる最大のポイントは「腐敗させない」ことなので
- 低温管理で雑菌を繁殖させない
- 魚が傷む3大要因(ぬめり、血液、内臓)の早めの処理
- 水分をしっかり拭き取る
の3点に気をつけて処理をしていきます。
①血抜き、ぬめり、内臓の処理
ではこちらのアカハタを例に進めていきます。
まずは魚を釣り上げた後の血抜きです。
血抜きの方法には様々なものがありますが、基本的にはどの方法でも今まで失敗はなかったので、エラを縦にハサミで切るか、エラの下の薄い膜をナイフで切ると血が出てきます。
血抜きについては魚が生きている間にしか行えないので、現地で行ってください。
内臓、ぬめりの処理については家に持ち帰ってからでも大丈夫です。
魚のぬめりについてはお酢を使うと、塩よりも簡単でしっかりとぬめりを落とせるほか、殺菌作用もあるので熟成にピッタリです。
ぬめりと鱗を落としたら、内臓を落とします。
内臓を取り出した後は、血合いの部分もしっかりと取ります。
血合いが残ると傷みやすいので、丁寧に取り除きましょう。
ここまで出来たら、キッチンペーパーなどを使って魚の水気を丁寧にふき取ります。
水気が残っていると雑菌が繁殖しやすいので、キッチンペーパーはケチってはいけません。
キッチンペーパーは使用頻度が高いので、僕はダイソーの洗えるキッチンタオルを使用しています。
②魚を丸ごと熟成させる場合
ここからは熟成方法が分かれるのですが、まずは魚をまるごと熟成させる場合。
まずはフレッシュマスターを用意して
シートの光沢のある面を上にして、魚を置きます。
後はキッチンぺーパーを内臓のところに詰めて、上から魚を丸ごとラップでぐるぐる巻きにします。
あとはこの状態でビニール袋に入れて、なるべく空気が触れないようしっかりと空気を抜いて口を閉じ、冷蔵庫で保管すれば完成です。
この状態でサワラなどの傷みやすい魚であれば1-2日、マス系や根魚系であれば3-4日程度寝かせてから刺身等にして食べます。
③切り身だけで熟成させる場合(昆布締め)
続いて切り身だけで熟成させる場合について紹介します。
3枚に卸したあとは、フレッシュマスターに包んで冷蔵保管をするという大筋は同じです。
ただそれだと少し寂しいので、今回は昆布締めの方法を紹介します。
まずは切り身にパラパラと塩を振って10分ほど放置し、魚の水分を抜きます。
次に昆布を用意します。
そのままだと硬いので、お酢を吸わせたキッチンペーパーで昆布を拭いて柔らかくします。
切り身の水分をふき取ったあと、少し柔らかくなった昆布を切り身の上に乗せて
フレッシュマスターで包み、その上からラップで包みます。
あとはビニール袋に入れて空気をしっかりと抜き、冷蔵保管して1日置きます。
翌日の様子がこちら。
昆布が切り身の水分を吸い、代わりに切り身に昆布の旨味が移っています。
このまま食べても美味しいのですが、根魚やタイなどはここから2-3日寝かせて食べると美味しいです。
実際に食べてみた
それでは実際に熟成させたアカハタを刺身で食べてみました!
まずは熟成4日目の切り身。
昆布を取った後のアカハタ、切り身の色は変わらずきれいで、腐敗臭もありません。
アカハタは炙り刺が有名ということで、トーチで炙っていきます。
焼き目をつけたら、お皿に並べて完成です。
見るからに美味しそうなのですが、いざ熟成させたアカハタの刺身を一口食べてみると
「これは…!!」
もっちりとして程よい弾力のある食感に、熟成させたことによる魚の力強い旨味でなんとも幸せな気分…。
また昆布の旨味もふわっと感じられ、非常に贅沢な気分です。
後日、更に寝かせたアカハタの刺身を食べてみました。
こちらはなんと7日寝かせた切り身。
身の色に変化はなく、相変わらず腐敗臭もありません。
こちらを先ほどと同様に炙り刺しにしたものがこちら。
さて7日間寝かせたということで、味に変化はあるのでしょうか?
一口食べてみると…
「旨い!!」
旨いことには旨いんですけど、正直なところ4日目の刺身と大きな変化はないですね。
今回のアカハタは初めて食べたんですけど、今までの他の魚の経験でも4日目以降は味の変化がないように感じるので、白身魚を寝かせて食べる場合でも4日くらいで十分だと言えそうですね。
こんなに贅沢な炙り刺しを単体で食べるのはもったいないということで
今回はヒレ酒を用意してみました。
ヒレの旨味が溶け出した熱燗は、熟成したアカハタの炙り刺しとの相性が最高でこの上なく贅沢な気分です。
今回は魚の熟成方法や、熟成に向いている魚などについて紹介しました。
しっかりポイントを押さえれば決して難しくないですし、更に美味しく刺身が食べられるようになるので、気になる方は参考にしてみて下さい。