リールの改造――それは、決して開けてはならないパンドラの箱。
「リールは精密機械だから中を開けてはならない」と言われることもありますが、開けてはならないというのは「もとに戻せなくなるから」ではなく、本当のところは「改造の沼にドップリはまってしまうから」なのだと気づいた今日この頃。

思えば僕が初めて手を出した改造は、ハンドルへのベアリング追加という、ほんの些細なものでした。
しかし、その小さな一歩こそが、釣りの沼にいっそう深く足を踏み入れるきっかけだったのです。
今回はリールの心臓部とも呼べる、ギアの部分を改造して、本来ドラグサウンドの鳴らない23アンタレスDCMDにドラグサウンドを搭載してみました。
この記事では改造に必要なパーツや手順などを紹介していますが、備忘録的な意味でも記事に残すことにしました。
23アンタレスDCMDを選んだ理由
今回、アンタレスDCMDを改造しようと思ったのは単にドラグサウンドを追加したかったからではなく、海釣りで何度も使用しているうちに、だんだんシャリ感やゴリ感が強くなってしまいまして

中を開けると、結晶化した塩やら砂やらで悲惨なことになっていたんですよ…
一応、パーツクリーナーでグリスと一緒に汚れを落としてはみたんですけど、交換しないといけないパーツも何点かあったので
「それなら一緒にパーツを注文してドラグ音も改造しちゃえ」
ということで、パーツリストから改造用のパーツを注文してみました。
改造前の注意点
改造方法の前に、まずは注意点について紹介します。
本来、リールに不具合が出た場合はメーカー修理に出すのが原則です。
自分で中を開けると、サポートの対象外となって修理を受け付けてもらえないこともあります。
今回紹介する改造方法は、全て自己責任で行ってください。
またアンタレスDCMDのドラグ音改造に限って言えば、他のリールのドラグ機構を流用するため「最大ドラグ力が純正の6kg→5kgに減る」と考えられます。
改造した際にもとに戻せなくなったというトラブルもよくある話なので、僕はリールの分解時には動画や写真でもとの状態がわかるようにしています。(実際、何度も救われています汗)
これらのリスクを承知の上で、自己判断でお願いします。
23アンタレスDCMDのドラグサウンド移植方法
全体の流れを確認
では流れを確認していきます。
23アンタレスDCMDの改造手順はこんな感じです。
①22エクスセンスDCのパーツリストから必要パーツを注文
↓
②既存パーツを取り出す
↓
③注文したパーツを組み立てる
それではやっていきましょう。
22エクスセンスDCのパーツリストから必要パーツを注文
ドラグサウンドのない機種にドラグサウンドを追加する手順ですが、基本的には「同メーカーのドラグサウンドがある機種のパーツを流用する」というのが王道です。
今回のケースだと23アンタレスDCMDはシマノのリールですが、ではシマノのリールであれば何でも良いというわけではなくて、特定の条件を満たす必要があります。
僕もこのあたりの条件を正確に把握しているわけではありませんが、同じギアのサイズでドラグサウンドを搭載している機種がやりやすく、今回のケースだと22エクスセンスDCがこの条件に当てはまります。
僕が使っているのは「23アンタレスDCMD XG L」なので「22エクスセンスDC XG L」のパーツリストからパーツを選びました。

慣れていない方だと頭がこんがらがるかもしれませんが、ドラグサウンドに関わるパーツは下の通り。
| No. | S Part No. | 部品 | 価格 |
|---|---|---|---|
| 35 | 13UYN | スタードラグ板 | 935円 |
| 36 | 10E9B | ドラグ音出シラチェット | 385円 |
| 37 | 1027W | スタードラグ座金 | 935円 |
| 38 | 10C0T | ドラグ音出シピン | 275円 |
| 39 | 10J8A | ドラグ音出シバネ | 165円 |
| 40 | 10J87 | ドラグバネホルダー | 165円 |
| 207 | 13UYP | ドライブギア LEFT | 2,860円 |
厳密にいうと、直接的にかかわっているのは35、36、37、38、39、40、207で、このうち207のドライブギアは23アンタレスDCMDのものに穴を空ければ流用できるので207を削減することもできるのですが、ギアの加工に慣れていない方はギアごとまるっと注文してしまった方が簡単です。
アンタレスDCMDを分解
続いてアンタレスDCMDを分解していきます。

必要な工具はドライバー、メガネレンチ、ピンセットです。
またギアを交換するため、ギアグリスも用意しておいてください。
詳しい分解の方法はここでは省略しますが、部品を組み立てる順番や組み方が後で分かるように、動画で撮影しておくとよいと思います。
ドライブギアがむき出しの状態になるまで分解します。

この金色の歯車がアンタレスDCMDのドライブギアです。
22エクスセンスDCのドラグ機構を移植
それでは22エクスセンスDCのドラグ機構を移植します。
届いたパーツたちがこちら。

こちらのパーツを、パーツリストと見比べながら組み上げます。

まずは交換対象のドライブギア。
パーツとしては左の23アンタレスDCMDには穴が開いておらず、22エクスセンスDCには穴が開いているというのが違いで、その他のサイズやギアの数は全く同じです。(これが重要)
上で記載した通り、自分でこの位置に穴を空けられる場合、22エクスセンスDCのドライブギアは不要です。
続いて改造前に知っておきたいのが、ドラグ音が鳴る仕組みについて。
この仕組みが分かっていると、改造のイメージが湧いて組み立てやすくなります。
さて、肝心のドラグサウンドの正体ですが、直接的に関係するのはこの二つのパーツ

この左の歯車の突起が、右の音出しピンと接触することによって「ジジジ」という釣り人のテンションの上がる音を奏でてくれています。
さて、では具体的な組み立て手順ですが、まずはドライブギアにギアグリスを薄く塗った後に、スタードラグ座金を乗せます。

続いてドライブギアの穴に、ドラグバネホルダー、ドラグ音出シバネ、ドラグ音出シピンの順にセットします。

ここが今回の改造の中で一番難しい部分で、とにかく音出しバネや音出しピンが小さいのなんの。
簡単に飛んで行ったり、落としたりしてなくなってしまうので、周りに物を置かないようにしながら慎重に作業しましょう。
セット出来たら、上からドラグ音出シラチェットを被せます。

最後にスタードラグ盤を被せれば、22エクスセンスのドラグ機構の移植は完成です。
あとは分解したときと逆の手順で組み立てていきます。
いざ、ドラグサウンドをチェック!
それでは組み上げた新生23アンタレスDCMDの動作を確認していきましょう。
まずは普通にリールのハンドルを巻きます。

まず巻き心地は良好。
- クラッチは正常に動作するか
- 巻き感は軽いか(シャリ感、ゴリ感はないか)
- レベルワインダーはちゃんと動くか
といった基本動作を確認します。
今回は無事に動きました。
では肝心のドラグが正常に機能するかの確認です。
ドラグを適度に締めて、スプールを抑えてハンドルを巻くと

「ジジジジジ」
と、きれいなドラグサウンドが鳴りました!
23アンタレスDCMDは性能は気に入っていたんですけど、魚がかかった時のドラグ音がしなかったのが物足りなかったので、これは本当に嬉しい!
やっぱり魚をかけた時にはコレがないと。
他にも
- ドラグをフルロックした時にスルスルと滑らないか
- ラインを引っ張った時にも正常にラインが出て、サウンドが鳴るのか
を確認します。
ここまで動作が確認できれば、無事に改造完了です。
まだ改造してから魚をかけていないのですが、ドラグを出してくれるほどの魚がかかったら、この記事に追記しようと思っています。
【おまけ】塩ガミでジャリジャリの23アンタレスDCMDをメンテ
ここからはドラグサウンドとは別に、塩ガミしてジャリジャリになった23アンタレスDCMDをメンテナンスしました。

中を開けるとサビや結晶化した塩、砂などによってコンディションは最悪。
また塩ガミの程度は深刻で、だましだまし使っていると遂にはハンドルを巻いてもスプールが完全に動かなくなってしまいました。

最も深刻だったのはピニオンギアの受け側のベアリングで、完全にピニオンギアと固着していたので、クラッチを切ってもピニオンギアが移動しないため、ハンドルの回転がスプールに伝わらない原因に。
他にもベアリングの状態がかなり悪かったので、関係しそうなベアリングを全て交換することにしました。
| 23DCMD部品No. | 必要数 | 寸法 | NMB型番 | シールド |
|---|---|---|---|---|
| 22 | 2個 | 8×12×3.5mm | DDL-1280ZZ | 両側金属シールド |
| 27 | 1個 | 3×10×4mm | DDR-1030ZZ | 両側金属シールド |
| 31 | 1個 | 5×9×3mm | DDL-950ZZ | 両側金属シールド |
これらのパーツは23アンタレスDCMDのパーツリストからも注文できるのですが、純正のベアリングは1個1,375円程度と非常に高価。
高くても今回のようにサビる時はサビるので、安価なNMBベアリングを使用してみました。

サイズも23アンタレスDCMDで使っているのと同じものを使っています。
ちなみに新品のベアリングは油がないので、自分でオイルを注油しましょう。

僕はリールのメンテナンスにはグリッチオイルを使っています。
回転性も非常にいいですし、防錆性に特化したものなど様々な種類があるので便利です。
今回は耐海水用に防錆性に優れたものを使ってみました。

あとベアリングのメンテナンスには、こんな感じのベアリングチェックツールがあると便利です。
4個のベアリングを交換したところ、塩ガミも無事に解消されて無事に復活を果たすことができました。
【まとめ】リールの改造はやっぱり楽しい!
今回は23アンタレスDCMDにドラグサウンドを移植する方法について紹介しました!
さらに塩ガミで動かなくなっていたリールも、ベアリングを交換することで復活させることができました。
もちろんリールの分解や改造にはリスクが伴いますが、自分の手で手を加えたリールには、既製品とはまた違った愛着が湧くものです。
また他にもスピニングリールでも、26ナスキーのベアリング追加方法などを紹介しているので、気になる方はこちらの記事も併せてご覧ください。

